アルコール依存症克服ガイド

「底つき体験」とは?

アルコール依存や薬物依存など、
依存症を克服した人が語る体験談の中によく出てくるのが、
「人生のどん底を見た」というエピソード。

 

生活が破たんし、家族からも見放され、絶望の淵に沈みこんでうちひしがれる…。
これを、「底つき体験」といい、まさにその言葉の通り
「落ちるところまで落ちている」という状態なのです。

 

非常に深刻な状態ですが、見方を変えれば、
「あとは這い上がるだけ」ですよね。
これ以上落ちる先がないわけですから、そこに残っているのは、
ある意味では“希望”だけなのです。

 

実際、この底つき体験を経たことによって
本気で依存症を克服することを決意し、
普通の社会生活が営めるまでに回復している方も多いよう。

 

いくら周りが
「このままではダメだよ」「治療しないといけないよ」
…と勧めても、結局は本人が本気で変わる決心を固めなければ
依存症から抜け出すことはできないのです。

どん底を見せる覚悟を決める

底つき体験には、家族の強い決意も必要です。
なぜなら、依存症患者の家族もまた、変わらなければならないからです。

 

今までは、近所の体裁もあって、家族が依存症であることを
ひた隠しにしようとしてきた面もあったでしょう。
一時的な平穏を得るために、
患者の甘えを易々と聞き入れていたかもしれません。

 

どこかで、「うちの家族はまだ大丈夫」と、
思い込んでいた面もあったかもしれません。
本当は、もう大丈夫ではないことくらいとっくに気付いていたのに…。

 

患者にどん底を見せて変わってもらおうと決意したのならば、
自分たち家族もどん底を見る覚悟をしなければなりません。
暴れた患者を放っておけば
近所に家庭内の実情を知られてしまうかもしれませんし、
患者の暴言や暴力にさらされることもあるかもしれません。

 

それでも、「もう甘やかさない」と決めたのならば
その信念を貫き通すことです。
家族が甘い顔を見せれば、
患者はまたその隙に付け込んで甘えてくるでしょう。
それではいつまで経っても、患者も家族も変われないのです。

 

患者だけではなく、家族が一丸となって
底つき体験を引き受ける覚悟を決めなければなりません。

全てがなくなった後には希望が残る

ちょっとマニアックな話になりますが、
占いに用いられるタロットカードの中に、
「星(The Star)」というカードがあります。

 

これは、廃墟の中から希望が生まれるという意味を表すカード。
人間の“おごり”が神の逆鱗に触れ、
人間が作った塔が破壊されてしまった後の瓦礫の街に、
“希望”の星がのぼるのです。

 

つまり、全てを失っても、
まだ希望だけは残っているんだよということを伝えてくれる、
ささやかながらも前向きなカードなんですよね。

 

依存症の治療もこれと類似したところがあり、
底つき体験をした後には必ず何らかの希望が見えてきます。

 

例えば、今までは酒びたりで
物事を考えることすらできなくなっていた人が、
入院・断酒して酒が抜けたことで
ようやく自分が置かれた現実に向き合えるようになる。

 

もう、自分はどうにもならない状態まで落ちてしまったことを、
初めて実感するわけです。

 

ここまでくれば、もう、「どうにかして変わるしかない」
家族を苦しめてきたこと、もう、自分をだましてでも
病院に入院させる以外に家族に手段が残っていなかったこと、
自分は職も社会的な信用も失ってしまったこと…。

 

そうした現実に向き合えば、少しずつでも
「酒を止めなければ」という回復への決意が芽生えてくるものです。

 

人は、弱い生き物ですが、それと同じくらい強い生き物でもあります。
一度どん底まで落ちても、本人に生きる力さえあれば
必ずもう一度這い上がることができます。
家族にできることは、本人の底力を信じること。
信じて、じっと待つことなのではないでしょうか。

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