アルコール依存症と「アル中」
アルコール依存症と似たような言葉に、
「アルコール中毒(いわゆるアル中)」があります。
一般的には、「アルコール依存症」よりも
「アル中」という言葉のほうが世間に浸透しているのではないでしょうか?
この2つ、実際は同じ病気!
アル中の症状を英語で「アルコホリズム(alcoholism)」といいますが、
これを日本では「アルコール中毒」という病名で呼んでいたのです。
さらに、アル中は「急性」と「慢性」に分けられていて、
大学生がイッキ飲みをして倒れて救急車で運ばれたりするケースは
前者に分類されます。
問題は、後者のほう。
中毒とは、食中毒などの例からも分かるように「急性的」で
「一時的」なものであることから、
「慢性アルコール中毒」を中毒と呼ぶのはふさわしくないという考え方が
主流になってきたんです。
アル中⇒アルコール依存症への改訂
日本で、「慢性アルコール中毒という表現は矛盾があるのでは?」
という考え方が広まりつつあった昭和50年頃、
アメリカの精神医学会(APA)やWHO(国際保健機関)でも
精神病の分類を改める時期にきていました。
その結果、アルコホリズム(alcoholism)は、
アルコール依存症(Alcohol Dependence)という病名に改められたのです。
WHOによれば、アルコール依存は、物質依存の一種。
アヘン類や大麻、コカイン、覚せい剤、鎮静剤、睡眠剤、カフェイン、
幻覚剤、ニコチン、揮発性溶剤、抗不安剤…等々、
これら複数の物質への依存と並列で考えられているのです。
この頃から、日本でも専門家の間では
「アルコール依存症」という言葉が使われるようになったということです。
現在では、アルコール中毒(アル中)という病名は
もっぱら急性の症状に対して使われているようです。
(そう考えれば、アル中とアルコール依存症は
似て非なる病気と考えることもできますね)
アル中につきまとう“偏見”
みなさんは、「アル中」という言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか?
かつて、アル中=社会不適合者と捉えられていた時代もあり、
今だにアルコール依存症患者をそういった目で見てしまう方も多いようです。
アルコール依存症であることを
周囲の人や職場の上司にカミング・アウトすることには
かなりの勇気と覚悟が必要なのです。
しかし、一つだけしっかりと認識しておいて欲しいのは、
アルコール依存症(=アル中)は「病気」であるということです。
朝から仕事もせずに酒ばかり飲んでいるのは、
本人がだらしないからではありません。
アルコール依存症という病気が、そうさせているだけなのです。
そういった基礎的な知識のない人からの偏見や中傷は、
患者の症状を一層進行させます。
そして、患者を支える家族の気持ちもまた、
世間の心ない偏見によって折れてしまうこともあるのです。
人が抱えている心の闇や問題は、傍からみるだけでは分かりません。
家族にアルコール依存症患者を持つ人を面白半分にからかったり、
好奇の目で見たりすることは、自分の無知をさらけだしているようなもの。
病気のことを正しく理解してできる範囲内でサポートしてあげることが、
周りの人に課せられた使命ではないでしょうか?